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ピーター・グロソップの《ヴォツェック》@Met in 1974 [オペラの話題]

glowozzeck.JPG
 話題が旬なうちに、“グロ様”ことピーター・グロソップの《ヴォツェック》について、自伝 “PETER GLOSSOP The Story of a Yorkshire Baritone” から得た情報を中心にまとめておくことにします。

 グロソップは1974年、NYのメトロポリタン歌劇場(Met)にて、《ヴォツェック》のタイトルロールを演じました。

 自伝の本文には1974年とありますが、写真の説明には1972年とありました。ちょっと混乱したのですが、Metのアーカイブで検索してみたところ、1974年が正しいようです。
 10/7, 10/12, 10/17, 10/23, 11/2 の5回とも、グロソップが出演しています。

 初日(10/7)のキャスト、スタッフは以下のメンバーとなっております。

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WOZZECK

Wozzeck.................Peter Glossop
Marie...................Janis Martin
Captain.................Andrea Velis
Drum Major..............William Lewis
Doctor..................Donald Gramm
Andres..................Kenneth Riegel
Margret.................Joann Grillo
Apprentice..............Richard Best
Apprentice..............Robert Goodloe
Fool....................Robert Schmorr
Soldier.................William Mellow
Townsman................Robert Kelly [Debut]
Child...................Douglas Grober

Conductor...............James Levine

Director................Patrick Libby [Debut]
Designer................Caspar Neher
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ちなみに、《ヴォツェック》の原語はドイツ語ですが、この時は英語で上演されました。

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 グロ様が《ヴォツェック》を歌うことになった経緯や周辺事情が、およそ2ページにわたって自伝に記されていました。
 いつものように、ヨークシャー産エリンギ語訳を…と思ったのですが、長いので標準語にしときます。
 

 1974年のメトロポリタン歌劇場での《ヴォツェック》を一緒にやらないかと声をかけてきたのは、ジェームズ・レヴァインでした。

 ヴォツェックのようにハイレベルでやり甲斐のある役に声がかかるなんてとても嬉しかったのですが、歌ったことなどありませんでしたから、はじめは自信がありませんでした。ジェレイント・エヴァンスがコヴェント・ガーデンでヴォツェックを演じたのは観たことがあったのですが、頑丈に作りこまれ声をひどく酷使する作品で、大変な衝撃を受けたものです。

 自分にこの役を歌えるのか、貧しくて無知で、周囲の人々から虐げられ、妻を殺して自殺をする精神異常の兵士を演じることができるのか、定かではありませんでした。

 しかし、これはまたとないチャンスでした。偉大で魅力的な作品に出演することで、自らの声により力強さを与え、歌唱による演技を探求することができるのです。私はレヴァインの申し出を受けることしました。
 ともあれ契約をしなければなりませんので、ヴォツェックを引き受けるからスカルピアもやらせろと言ったのです。リハーサル期間中にスカルピアを4回。Metにデビューしたてのくせに、生意気ですが、劇場側はすぐに承諾してくれました。(*1)

 私の初めてのヴォツェックはとてつもなく大きな挑戦でしたが、結果、Metでのキャリアで最も成功した役となりました。引退した現在でも、あの歌劇場での私のベストパフォーマンスだと言ってくださる方々がいます。

 むろん、これまでとは大きく異なる役を引き受けるということは緊張しますし恐ろしくもありましたが、それと同時に、難解な歌をいったんコントロールできるようになりさえすれば、この計り知れない素晴らしさを持つオペラを演じるのは大変スリリングなことです。

 ある意味、ヴォツェックはリゴレットと共通するキャラクターです。ヴォツェックは被虐待者であり、観客の深い同情を誘わなければなりません。そして私は、それができたと思っています。実のところ、私はリゴレットを多く歌い込んできたからこそ、ヴォツェックの演技に生命を吹き込む術を知ることができたのではないかとさえ思っているのです。こう言うと訝しく思う方もいるかもしれませんが、要するに、リゴレットが真に悲劇的なキャラクターであると観客に確信させるためには型どおりのリゴレット歌唱以上の歌唱をしなければならないということです。

 ヴォツェックとリゴレットは音楽的にはなんら共通するところはありませんが、演技の探求においては同様のチャレンジが必要です。ヴォツェックの悲劇を表現するには、ベルクの書いたぎこちなくて不穏なヴォーカルラインをなぞるだけの歌唱以上の境地に入っていかなくてはならないのです。




 グロ様……この期に及んで、またリゴレットですか……(*゚Д゚)


(*1) グロ様のMet デビューは1971年の《トスカ》で、スカルピアを演じています。指揮は、同じくMetデビューのジェイムズ・レヴァイン(当時27歳)。配役は、トスカがグレース・バンブリー、カヴァラドッシがフランコ・コレッリでした。
 《ヴォツェック》のリハーサル中に出演した《トスカ》とは、1974年 9/26, 10/1 の公演のことと思われます。実際にリハーサル期間だったのは2回のようですが、なんと《ヴォツェック》の本番の合間の10/19, 10/26 にもスカルピアを歌っており、それを足せば計4回。グロ様の記憶の通りです。




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関連記事リンク
◇《ヴォツェック》@新国立劇場11/23
◇ピーター・グロソップのリゴレット@イタリア歌劇団来日1971

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コメント 4

ぶどう

あれ、グロ様のリゴレットって聴いた記憶がないんですが、実はかなりの自信作??
by ぶどう (2009-11-27 21:29) 

しま

ぶどうくん>
グロソップの当たり役はリゴレットなんですよ。
世界一のリゴレット歌いだとは、そんなことはモチロン言いませんが、当時としては英国人だてらに頑張ったほうじゃないかと思っています。

正規盤でイタリア語による全曲録音が残っていないのが悲しいわ。英語上演の抜粋盤ならあるんですけど。
by しま (2009-11-27 23:45) 

keyaki

英語だったんですね。
グロ様とドイツ語って結びつかなかったんですけど、ドイツ語でなにか歌ってますか?

>ヴォツェックを引き受けるからスカルピアもやらせろ
なるほど、こういうふうに交渉して、自分のやりたいものを歌うんですね。著名な歌手は皆さんいろいろ条件出してるんでしょうね。

by keyaki (2009-11-28 18:24) 

しま

keyakiさん>
グロ様とドイツ語…そうですねぇ…。
意外とR・シュトラウスを歌っていますが(ヨカナーンとかも)、当時のことですので、ほとんど英語歌唱だったはずです・・・。

そんな中、《エジプトのヘレナ》では珍しくドイツ語で歌っています。アルタイル役ですが、現存するグロ様のドイツ語唯一の録音かもしれません。

私はドイツ語はわかりませんが(第2外国語だったはずなのに・・・;;;)、グロ様の歌の部分だけはなんだかイタリア語みたいに聞こえますよ。
ごくたま~に子音が聞こえるので、頑張ってドイツ語で歌っているんだなぁということはわかります(笑)
by しま (2009-11-28 19:54) 

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