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夢とロマンの大相撲…じゃなくて「大理石のような大空にかけて誓う」/14人のイァーゴ [オペラ録音・映像鑑賞記]

maureltamagno.jpg 19世紀生まれのアンティーク歌手たちによる《オテロ》名場面集より。

「復讐の二重唱/大理石のような大空にかけて誓う」

 妻デズデーモナの浮気をほのめかされたオテロが、ついにブチ切れて復讐を誓い、内心ほくそ笑んでいるイァーゴが忠節を装って同調する、大迫力の二重唱です。

 なまめかしくも静かなイァーゴの語りから、突如ドッカーン!と爆発する金管とオテロの叫び。オテロ歌いのテノールの強靭な歌唱の聴かせドコロでありますが、イァーゴのパートにも注目(耳)したい。

 実は重唱になる前はバリトンが主旋律を歌うのでして、その後もストレートで単調なオテロの旋律に、派手に上下するイァーゴの旋律が蛇のようにまとわりついて、両者の関係を実に見事に描写しています。

 で、あるからして。
 ここはテノールとバリトンが死力を尽くして声の大相撲をとってくれなきゃいけないのっ(`・ω・´)シャキーン

 バリトンが聴こえなきゃ意味ないでしょ。
 で、バリトンに煽られたテノールは、ここでかき消されたらテノールの名折れとばかりに、更に大声を出してくれなきゃいけないのっ。でなきゃオモシロくないでしょ。

 ここはいっちょう伝説のオテロ力士、フランチェスコ・タマーニョ(画像右)とヴィクトール・モレル(画像左)…といきたいところだけど、残念ながら録音という“場所”では元祖たちの顔合わせはナシ。
 ひと世代後の東西の名横綱、エンリコ・カルーソーティッタ・ルッフォの取組に期待。

 仕切り直しで気合を入れるのテノールの掛け声、
「さんぐぇヽ(`Д´)ノ!!  さんぐぇヽ(`Д´)ノ!! さんぐぇヽ(`Д´)ノ!!」
にも注目(耳)しましょう。

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《ローエングリン》@新国立劇場 6/13 -- フォークト! フォークト! そして伝令 [オペラ実演レポ]

lohen.jpg
《ローエングリン》の1文あらすじ。

無実の罪をきせられたエルザ姫は、突然現れた白鳥の騎士に「決して名前を問わぬ」ことを条件に窮地を救われ、愛し合うも、魔女に唆されて騎士の名前を尋ねてしまい、騎士の愛と庇護を失う話。

 とにかく目当てはクラウス・フロリアン・フォークトです。

 フォークト! フォークト!

 演奏の良し悪しや歌のテクニック云々より、歌手の「声」そのものに興味のある私にとって、フォークトさえ聴けるのなら、苦手な作曲家だろうがその中でも特に苦手な演目だろうが(たぶんそうだと思う)関係ない。

 苦手といいつつ、演奏を聴いていて鳥肌が立ったポイントは2つあって、1つ目は1幕への前奏曲。2つ目がフォークトの登場の第一声で、あれを聴いた瞬間に、オケも他の歌手も作品の好き嫌いも拘束時間5時間の恐怖も消えてなくなってしまいました。

 神懸りとでも言いましょうか。あの透明感、清らかさ、曲がることのない光のように、真っ直ぐに響く力強さ。これが人間であってよいものか。「天上の声」とはこのことだ。

 その清らかな美声の、なんと残酷であったこと……。

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カルーソーの歌を “聴く” ヘレン・ケラー -- 魂の対話 [オペラの話題]

carusoandkeller.jpg 小学生の頃に読んだ伝記に、
ヘレン・ケラー(1880-1968)が有名なオペラ歌手の唇と喉に触れて、その歌を聴いた”
というエピソードがありました。

 なにしろ子どもだったので、「振動を感じるだけじゃ歌なんてわかんないのに」と思いましたが、それなりに「いい話だな」と結論づけて、今に至るまで完全に忘れていたものです。

 YouTubeでたまたまこの動画を見つけて、「有名なオペラ歌手」というのがエンリコ・カルーソー(1873-1921)であったことを、ワタクシ、初めて知りました。
(右上の画像をクリックするとYouTubeに飛びます)

 もしかしたら、伝記にもちゃんと名前が書いてあったのかもしれませんが。
 そのエピソードが載っている同じページに、「数人のダンサーに囲まれて、バレエを“感じ”ているヘレン・ケラー」の写真があって、そちらのほうが子ども心に納得したので、バレエのエピソードは成人してからも何度も思い出すことがあったんですけれども。

 ケラーとカルーソーの出会いは1916年4月24日、ジョージア州アトランタでのことでした。ジョージアン・テラス・ホテルに宿泊していたカルーソーの部屋だったそうです。この時の様子はフィルムにも収められたとYouTubeのコメント欄にはありますが、サイレント映画の時代ですので、実際の音声は残っていないでしょう。

 リンク先のYouTubeの動画は、当時の新聞記事の画像と、カルーソーの歌う《サムソンとデリラ》3幕のアリア、「ああ!私の不幸をご覧ください」の音声を組み合わせたものです。小学校中学年当時とは違ってとても心に響きました。

 当時の様子を記したNYタイムズのコラム(1916/4/25)があります。こちら
 以下におおまかな訳を紹介します。

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夢とロマンの「ある夜のこと」/14人のイァーゴ [オペラ録音・映像鑑賞記]

othelloiago.jpg 19世紀生まれのアンティーク歌手たちによる《オテロ》名場面集より。14人のイァーゴ聴き比べ。

“ある夜のことです。宿舎でカッシオと眠っていた折、私は聞いてしまったのです。
 彼の唇がゆっくりと動いて、デズデーモナへの禁断の愛を囁くのを…!”


 オテロの妻デズデーモナと腹心カッシオの不義を吹き込むイァーゴの語り。
 淫らな夢を見るカッシオ(もちろん全くの作り話)を真似て、甘美で官能的な言葉を囁き、オテロの嫉妬心を煽ります。

「酒の歌」では豪快に、「クレド」では悪魔的な歌唱を繰り広げるこの役に与えられた、唯一のお色気っぽい歌唱が聴けるシーン…ということで、妙なハイテンションで聴いてしまう私(笑) イヴをそそのかす蛇のような狡猾なアプローチでも構わないのですが、ここを官能的に歌うからこそ、証拠もないのにオテロの猜疑心が一気に沸点に達するのでは?と思っております。

 バリトンのセクシー歌唱を聴きたいだけという、「趣味」の問題かもしれませんが(笑) 我らがアンティーク・バリトンの先生方のお色気度は如何に。

 尚、この回には、1887年の《オテロ》初演時にイァーゴを歌ったヴィクトール・モレルが参戦します。

 ※右上は1995年の映画『オセロー』の1シーン。ローレンス・フィッシュバーンのオセローと、ケネス・ブラナーのイァーゴ。


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夢とロマンの「クレド」/14人のイァーゴ [オペラ録音・映像鑑賞記]

gobija.jpg 19世紀生まれのアンティーク歌手たちによる《オテロ》、名場面集より。14人のイァーゴ聴き比べ。

 第2弾は「クレド(無慈悲な神の命ずるままに/悪の信条)」です。

 シェイクスピアの原作には無い、ヴェルディの《オテロ》独自のシーン。
「俺は残忍な神の申し子であり、悪そのものなのだ」と、イァーゴの本性があからさまに語られます。

 この独白により、イァーゴがオテロを陥れるのは「自分を引き立ててくれなかったことへの恨み」ではなく(それは表向きの理由)、そもそもが悪魔的な人間だからだということになるのですが、それを言葉どおりに受け取るか、裏に隠された意味を読み取るかで、この卑劣なキャラクターの演じ方が変わってきます。

 その昔はストレートに悪を肯定する表現が主流だったのではないかと思われます。イァーゴ名人ティト・ゴッビ(右上)はおそらくその最高峰。とんでもなく憎々しい「悪人イァーゴ」を見事に演じ、歌っています。一方、最近ではこの独白の言外に滲み出るイァーゴの自嘲を嗅ぎ付け、より複雑な性格表現を試みる歌唱も増えてきたのではないでしょうか。

「酒の歌」のコメント欄にてkeyakiさんが仰っていた、“ラストの高笑い” をどう処理するかも、それぞれの歌手の個性が見えて楽しめます。

 尚、「クレド」から我が家の最強ポケモンであるところのティッタ・ルッフォも参戦します。大声では負ける気がしません。大声では。

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「クレド」関連記事リンク
超レア!! -- ご禁制のアレンの“クレド”
グロソップ×ウ゛ィッカーズの『オテロ』/ヴェルディ :1


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夢とロマンの「酒の歌」/14人のイァーゴ [オペラ録音・映像鑑賞記]

oteya.jpg 《オテロ》好き、かつ、最近アンティーク歌手の魅力に目覚めてしまった私の為にあるようなCD、『Otello & Jago』を聴いております。

 最古の録音が1902年!! 最も新しいものが'51年のデル=モナコです。
 デル=モナコは20世紀生まれだし、録音年も新しすぎ(笑) このCDの主役である先生方、19世紀生まれのお歴々と比べますと「お呼びじゃない」って気がしますけれども。

 CDの2枚目の“イァーゴの巻”では、現在もゆるく進行中の「闘牛士の歌聴き比べ」に登場した名歌手たちの名前もあります。

 エスカミーリョではことごとく撃沈したイタリア人バリトンどもも、さすがヴェルディでは本領発揮。良いシゴトをしていますよ。

 更にテンションの上がることに、初演時のオテロとイァーゴだったフランチェスコ・タマーニョヴィクトール・モレルの貴重な録音が、他の歌手と同列に収録されているのです!

 ヴェルディ大先生に愛されたモレルと、あまりのヘタさに居残り練習させられたタマーニョ。エネルギッシュなヴェルディ魂を直接受け継いだ二人の声と歌唱を、晩年のものではありますが、この耳で直接聞くことができるとは。これぞアンティーク演奏を愛でる醍醐味、夢とロマンの極み

 更に更にすごいことには、単に古い音源を集めただけの選集ではないらしい。

 まず、音質がとんでもなくキレイ。レコード特有のあの雑音が極限まで排除され、歌手の声に奥行きが感じられます。例えば、私の持っているルッフォの“クレド”は、このCDに収録されているものが同音源での2つ目、カルーソーとの“神かけて誓う”は同音源での3つ目になりますが、明らかにこのCDの音のほうがクリアです。声の響きの微妙な変化まで聴き取れるので、ファンにとってはたまりません。

 そして、雑音なんかよりもこちらがいちばん大事なんでしょうが、レコードの回転速度によるピッチの上ズレもきちんと補正したとのこと。

 「闘牛士の歌」で私がいちいち気にしていたのもそれ。最高音がどこまで出せたかというのは私にとってはあまり重要ではありませんが、それよりも声の響き、厚みの違和感が大問題です。回転速度が変わっただけで印象が全く違ってしまいますし、いったん違和感に気付くとその歌手が人間からお人形さんに戻ってしまう。

 従来、明るい声でハイ・ピッチに歌われていたと思われていたタマーニョの録音も、実はレコードの回転速度がめちゃくちゃ速かっただけのようです。当時はレコード会社の間で速度の取り決めが為されていなかったため、こんなことが起こるんですね。このCDでは実際に歌ったキーを特定するところから丁寧にリストアされているので、よりタマーニョの肉声を想像しやすく、初演当時に思いを馳せることができるかも。
 
 以下に、ツィッターでちまちま呟いた感想をまとめました。
 とりあえずイァーゴから。普通は1枚目のオテロから聴くんでしょうが・・バリトン贔屓なので順序が逆ですw

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イァーゴ聴き比べもくじ
【酒の歌】アマート, ストラッチャーリ, スタービレ, シュルスヌス
【クレド】ジラルドーニ, アマート, ルッフォ, ガレッフィ, ボルゲーゼ, ダニーゼ
【ある夜のこと】モレル, ジラルドーニ, サンマルコ, バッティスティーニ, ルッフォ, ストラッチャーリ
【大理石のような大空にかけて誓う】アマート, ルッフォ, ストラッチャーリ, フランチ, バシオラ

オテロ聴き比べもくじ
【喜べ!】タマーニョ, デ・ムーロ, オサリヴァン, ザネッリ, ラウリ・ヴォルピ, デル・モナコ/【既に夜も更けた】メルリ&ムツィオ
【清らかな思い出は遠い彼方に】タマーニョ, デ・ネグリ, エスカレ, カレヤ, ヴェッツァーニ, ゼナテッロ, ザネッリ, ラウリ・ヴォルピ, マルティネッリ
【主よ!あなたは私の頭上に】エスカレ, ザネッリ, ペルティレ

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トスカニーニ盤《オテロ》'47年 -- ビナイのオテロとヴァルデンゴのイァーゴ [オペラ録音・映像鑑賞記]

toscaniniotello.jpg 《オテロ》の一文あらすじは⇒こちら

 アルトゥーロ・トスカニーニの《オテロ》(1947年)を聴きました。

 名盤という評判ですし、トスカニーニは19才の時にチェロ奏者としてオケピでこの作品の初演に参加したとの事で、つまり「動く」ヴェルディ大先生を見たことがある人の棒による演奏ですから、前々から興味はあったのですが・・。

 敬遠していた理由は、イァーゴを歌うジュゼッペ・ヴァルデンゴの声が軽いという評をどこかで目にしたことがあったので。

 今回、聴く気になったのは、オテロ役のラモン・ビナイのキャリアがバリトンドラマティック・テノールバリトンと変遷し、しかもバスの役まで歌ったということを知ったからです。

 バリトンからテノールへの転向組はそんなに珍しくありませんが、「バスって何よ、バスって?(*゚Д゚)」という興味から、いっちょう聴いてやろうじゃないかと重い腰を上げたわけです。

 その第一声、"Esultate!" を聴いた瞬間に思ったのは、「良いと言われているものは素直に聴いてみるべきだね」ということ。
 テノール時代はもう「オテロ専門家」みたいな歌い手だったとのことですから、魅了されないはずはありません。

 トスカニーニのダイナミックでサクサクした指揮にハマッてしまったこともあり、これまでの愛聴盤であったカラヤン盤(ヴィッカーズ×グロソップの)はしばし封印することにしました。

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No.81~83 ベリー, クヴィエチェン, ギュゼレフ ["闘牛士の歌" 聴き比べ]

聴き比べ企画 Chanson du Toréador -- 100人の「闘牛士の歌」 もくじはこちら

「ウィーンの3大エスカミーリョ」、エットレ・バスティアニーニ、ワルター・ベリー、ジョージ・ロンドン。ついに2人目のベリーが登場!
バスティアニーニの一人勝ち( ´ー`)y-~~だと思っていましたが、意外や意外。ベリーもけっこうイケてます。

引き続きロンドンの闘牛士も捜索中です。皆さんの通報をお待ちしています。

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walterberrport.jpgNo.81 ワルター・ベリー(Walter Berry)/オーストリア/1929 - 2000
原調/ドイツ語/録音年不明/
ウィーン3大エスカミーリョの2人目。'66年ザルツブルク音楽祭のお茶目なフィガロのイメージが強くて「どうなのよ?」と思っていましたが、当初の想像より男前っぽい歌いっぷりでびっくり。色気もアリ。歌い崩しもなく、こんなにイイ男だったっけ?と逆にツッコミたくなります。
No.70のプライほどでないにしても、気品だって感じられる。ドイツ語歌唱が気にならない点もプライと共通。もちろんベリーらしい愛嬌もそこかしこから漂ってくる。
顔から迫るバスティアニーニ(No.10, No.23)に対し、ベリーの歌唱は女性をすっと引き寄せる感じ。見直しちゃったよ・・



No.82 マリウシュ・クヴィエチェン(Mariusz Kwiecien)/ポーランド/1972 -
原調/フランス語/録音年不明/ライブ?
新国ドン・ジョヴァンニでの陶酔(⇒レポはこちら)が未だ記憶に新しく、ワクワクして聴いたものの、残念ながらそこまでの魅力は感じられない。声もこんなに薄かったっけ・・?
あのドンが特別だったのか、私の記憶が美化されているのか。
しかし元気溌剌な歌唱はドンで受けたイメージそのまま。#歌唱と東欧っぽいビブラートが、同じくドン歌いとして注目しているクリストファー・マルトマンには無い魅力を醸しているし。今のところポケモンに加えるのは保留にしているけど、やはり気になるバリトンではあります。



No.83 ニコラ・ギュゼレフ(Nicola Ghiuselev)/ブルガリア/1936 -
原調/フランス語/録音年不明/
重めな歌唱でトレアドール・ソングとしては好みじゃないけど、それを除けばOK範疇なバスカミーリョ。陽気な雰囲気があるからかもしれない。粋な遊び方をするオジさん風。「らぁ~あ~むぅ~る」は微妙にセクシーだし。一緒に飲みに行ってバーカウンターに並んで座ってあれこれ相談に乗ってもらいたいぞ!(←そりゃ闘牛士じゃなくて“理想の上司”だ)


※(この3つの音源を提供してくださったBasilioさん、ありがとう! そして現在進行中の大審問官の聴き比べ、頑張ってください!)

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