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《トスカ》@新国立劇場12/2 -- 不完全燃焼 [オペラ実演レポ]

t2.jpg 12/2、初日を観てきました。

 これも聴き飽きた部類の演目ではあるのですが、今年の新国通いが《ヴォツェック》で終わるのもなんだかな~・・だったので、駆け込みでチケットを取りました。

 やはり「いかにもオペラ!!」ってな音楽と豪華な舞台で盛り上がりたいではないですか。

 ここ最近は、全く耳慣れないオペラにばかり行っていたので、《トスカ》のようにそれなりに知っている作品というのも安心感があって良いものです。

 ただ、こういう有名ドコロはCDやDVDでいわゆる「一流」の演奏に簡単に触れられるので、私のようなシロウトでもそれなりに耳が肥えてしまっています。ナマ鑑賞も、06年のローマ歌劇場のお引越し公演で、大枚はたいて体験してしまったし。懐かしのレポはこちら。まだ前のブログがオペラ専門じゃない頃に書いた記事です♪)

 多少のガッカリ感は覚悟した上で、会社から初台へ直行しました。

 ちなみに新国立劇場は、我が職場から徒歩で15分程度の近さなのです。あまり平日に行ったことがなかったので、この日はじめて気付いた事実でした。
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t6.jpg 座席は1階、17列。ちょい左寄り。

 ステージは全て視界に入るし、左右の字幕もストレス無しで読めます。視力が良い方なら、歌手の表情もそれなりに確認できますし、ここならS席の値段も納得というもの。

 ただ、私のまん前に座った男性がたいへん座高の高い人で、この人の後頭部でトスカがほとんど見えませんでした。高い値段を払ったのに、首を左右に傾けなければ何も見えなかったというオチ付きです。身長が高いという自覚のある方は、座り方に少し気をつかっていただきたい・・・。私も着物の時には後ろの方のジャマにならないよう、工夫して座りますから。

 さて、初日の《トスカ》ですが、結論から先に述べてしまいますと、予想を上回るガッカリ感です。主役2人がまったくもって不完全燃焼で、歌唱にはハラハラさせられっぱなしだし、オケの演奏ともズレズレで、「ちゃんとリハしたんでしょうね?」と疑いたくなる部分も多々ありました。

 指揮も、全体的にテンポが速めなのは嫌いではないのですけど、なんというか、「暴力的な部分と官能的な部分が混ざり合ったような」私好みの「トスカ」ではありませんでした。特にテ・デウムの部分は、もうちっとねっちょりとやってくれてもよかったのに。

t1.jpg カヴァラドッシのカルロ・ヴェントレは、あまり美声歌手とも思えなかったのですけど、それでもまぁ部分的には力強い歌唱を聴かせてくれたりはしたのです。

 1幕が終わった時には、同行した妹と「このあと調子を上げてくるのかねぇ?」なんて話していたのですが。

 しかし、2幕は「ヴぃっとーりあ!!」に始まり「ヴぃっとーりあ!!」に終わったというか。その瞬間に照準を合わせ、後は精彩を欠いていました。

 3幕の「星は光りぬ」はまぁまぁか・・・。

 初日だからセーブしていたんだろうか? 他の日なら本領発揮してくれるのかな?とも思いましたが、チケットや日程の都合がつかず、検証できずじまいです。

t5.jpg トスカのイアーノ・タマーは…声質はまことに理想的なトスカだとは思いましたが、いかんせん歌唱が物足りない。

 タイトルロールなのだから、もう少ししっかりしてくれなくては。

 特に高音が気になったのですが、声に蓋がかかっちゃったような感じで全然響いてこないのです。トスカなんですから、ちょっとくらい耳障りなキンキン声になったって、響かないよりナンボかマシです。

 その一方で、低音域では地声をまじえて盛大に声の演技をするのですけど、高音の「悲鳴」が迫力不足なのに、呻き声ばかりが充実していてもバランスが悪いと思いました。やはり、2幕でカヴァラドッシがシャルローネ達に引きずり出されるシーンでは、こちらが耳を塞ぎたくなるくらいキイキイわめきたててくださらなくては。

 3幕もそんな調子でしたから、悲劇が悲劇として全く盛り上がらなくて、なんだか《トスカ》を観に行った気がしない。観客の私もどうも不完全燃焼のまま終わってしまいました。

t3.jpg とはいえ、スカルピアのジョン・ルンドグレンは、色気のある美声と鼓膜がビリビリするほどのデカ声で、私はかなり魅了されました。
(スウェーデン語では、ヨン・ルンドグレンと発音するそうです。ヨン様です、ヨン様)

 私がスカルピアの良し悪しを判定するのは、1幕半ばでまるでダース・ヴェイダーのように登場する時の第一声の迫力なんですが、ルンドグレンは「一発合格」を決めてくれました。その直前ではカヴァラドッシとトスカの物足りなさにいささか苛々していたので、余計に救われた気がしたのかもしれません。

 テ・デウムも「合唱との相撲(*1)」にしっかり勝って、最後まで声が届いていましたからね。フレデリック・シャスランの指揮は個人的にあまり納得がいかないのですが、テ・デウムで遠慮なくオケを大音量で鳴らしてくれたのは良かったです。それもこれも、スカルピア歌手の声量に自信があるからこそできること。

 粘着なスカルピア研究家の妹と、その昔スカルピアで一発当てたイングヴァル・ヴィクセルの大声について、幕間で語り合ったのは言うまでもありません(笑)

 ルンドグレンのスカルピアは、しかし、まだまだ歌唱プランに一貫性が足りないようです。声の色気と声量はまったくもって申し分ないので、ヤラしいお代官様タイプ(代表:ティト・ゴッビとか、ヴィクセルとか)でいくのか、色悪(ミルンズとか)でいくのか、デカ声で圧倒する単純キャラ(グロ様とか? 観たことないけどw)でいくのか、将来的には定まっていくのかもしれないです。

(*1)「相撲」
 オモシロ歌唱判定法の一つ。当ブログ特有の表現。
 歌唱のテクニックよりも声量を第一に誇る、いわゆる「大声歌手」同士が、重唱などで演技そっちのけで自慢の大声を張り上げて、自分がいちばん目立とうとする、あるいは相手の声をかき消そうとしている様子を、ネタとして面白がってこう呼ぶ。
 二重唱の場合は「タイマン」、三重唱の場合は「三つ巴」。
 《トスカ》の“テ・デウム”などでは、スカルピア歌手が合唱を相手に、自分の大声をかき消されまいと無謀なタイマンに及ぶことがある。それを「合唱との相撲」と呼ぶ。
 専門用語ではないため、この用語の一般使用は勧められない。


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Giacomo Puccini:Tosca
ジャコモ・プッチーニ/全3幕
【イタリア語上演/字幕付】

【指 揮】フレデリック・シャスラン
【演 出】アントネッロ・マダウ=ディアツ
【美 術】川口直次
【衣 裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァロッティ
【照 明】奥畑康夫

【トスカ】イアーノ・タマー
【カヴァラドッシ】カルロ・ヴェントレ
【スカルピア】ジョン・ルンドグレン
【アンジェロッティ】彭 康亮
【スポレッタ】松浦 健
【シャルローネ】大塚博章
【堂守】鹿野由之
【看守】龍 進一郎
【羊飼い】九嶋香奈枝

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

タグ:新国 トスカ
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コメント 6

ぶどう

職場が新国に近いなんてうらやましい限りです。

>その昔スカルピアで一発当てたイングヴァル・ヴィクセル

え、一発屋歌手?w
by ぶどう (2009-12-13 13:29) 

kazu

最終日行ってきました。

自分的には指揮はかなり?ですね。威勢が良いのは構わんのですが、繊細なところや粘りがイマイチかな。

とにかくやたら音が大きくて、逆に笑えました。(1幕の序奏などモノクロ時代の戦争映画か!と思いました)

4階Z席でしたがスカルピアの声、合唱に負けてませんでしたよ。
これで声と演技に極悪非道ぶりがプラスされれば・・と思います。
by kazu (2009-12-13 21:40) 

keyaki

しまさん
有望なスカルピア発見!だったんですね。私も名前を覚えておきます。

ところで、あの、週刊誌でも叩かれたローマの来日公演を見に行かれたんですね。

>トスカ:バーバラ・デッシー
おっとっと...ダニエラ・デッシーですね。

あの時期は、来日ラッシュで、新国も開幕してるし...ですごいことになってましたね。私は、見に行ってませんが、野次馬で記事を書いています。
http://keyaki.blog.so-net.ne.jp/2006-10-05
http://keyaki.blog.so-net.ne.jp/2006-10-06
by keyaki (2009-12-13 22:31) 

しま

ぶどうくん>
走ればもっと近いと思いますよ(笑)
でも普段は平日に行くなんてことはなかなかできそうにありませんから、あまり恩恵は受けなさそうです。
by しま (2009-12-13 23:12) 

しま

kazuさん>
そうそう、粘りがね、欲しいですよね。
音のデカさは私にとっては大歓迎なのですが(耳が悪いんでしょうか?)、あれが不評だったと仰る方もいらっしゃいますね。

ルンドグレンのスカルピアは「これから」だと思います。
by しま (2009-12-13 23:15) 

しま

keyakiさん>
そうそう、「デッシーが全日程歌うことになりました」って、配布されたキャスト表みたいなのにも書いてあったこと、覚えています。
裏の事情はわかりませんが、あれは私の初めての「生トスカ」でして、とっても楽しんだ公演でした。

>バーバラ
今の今まで気づきませんでしたよ!!(笑) ご指摘ありがとうございます。
直しておきました。

>有望
というより、とにかく「大声」だったということです(笑)
他の二人が失速していましたので、なおさら目立ったという感じです。
スカルピアとして完成するには、まだまだテクニック的にも演技の面でも試行錯誤が必要なんじゃないでしょうか。
by しま (2009-12-13 23:28) 

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